「フラッシュモブ」「電車」「冷凍庫」と渡り歩いた、場所を選ばない演奏家集団
「演奏できない場所はない」——安田音楽制作事務所 東京オフィスがこの言葉を使えるのは、電車内・冷凍庫・霊園・ガソリンスタンド・パチンコ店・寺院と、通常の音楽事務所では想定しない場所での演奏を積み重ねてきた記録があるからだ。2010年創業、2014年法人化、2022年に動画撮影配信スタジオ「月之音楽堂NENET」を開設、2026年に本社機能を東京へ移転と、段階的に規模を拡張してきた。登録演奏家は2024年4月時点で247名、拠点は全国9か所。
「昨日のパーティーよかったね!」「やるねぇ~!さすが!!」という反響が幹事へ届くことをヤスオンは成果の定義としており、当日の演奏品質にとどまらず翌日の周囲の反応まで設計に含めている。この視点は、JTB・近畿日本ツーリスト・ミキトラベルといった旅行会社との継続的な取引に結びついているようだ。
演目・料金・契約書。三つの「見える化」が安心を作る
クラシック演奏家の汎用性を活かし、楽譜がある楽曲であれば演歌・歌謡曲・JAZZ・アニメソングを問わず対応する。楽譜のない曲も、音源を提供すればデザイン部で譜面を制作するため、演目の自由度はほぼ無制限。全料金をウェブサイトに掲載し、問い合わせ前から概算が確認できる設計は「クラシックは高そう」という先入観を払拭するために整えられた。
業務委託契約書・関係書類の準備と、万が一の事故への対応体制もフローに組み込まれており、個人演奏家では対処しきれない契約まわりをすべて引き受ける。各拠点の基準駅からの交通費計算を採用しているため、地方開催でも費用が想定外に膨らむことが少ない。利用者から「そこまでやってくれてこの料金は安い」という声が継続的に届いているという。
代表が歌手として、マネージャーとして、現場に立ち続ける理由
代表・安田旺司はイタリアと国内の劇場での実績を持つ現役オペラ歌手で、案件によって歌手・ステージマネージャー・打ち合わせスタッフとして全案件に関与する。初回問い合わせへの返答は1営業日以内を基準とし、急ぎの場合は電話でも対応する体制を取っている。ミーティング用の資料・画像・映像を事前に準備し、担当者の社内プレゼンまでサポートするのも基本フローの一部だ。
個人的には、規模が拡大しても代表が現場から離れない運営スタイルを維持しているのが、対応の質を保つ根幹になっていると感じた。明治安田生命・株式会社ニプロ・パナソニックホームズとの取引実績、そして公益財団法人びわ湖ホールや各地の文化振興財団との連携が、その対応品質の結果として積み上がっている。
宇宙空間を次の演奏会場に設定する、ビジョンのスケール感
「走る電車コンサート」でヤスオンを全国区に押し上げた発想力は、「フラッシュモブinオペラ」「Maiko with OPERA」「サプライズ余興シェフDeオペラ」というパッケージ演出に進化して現在も活用されている。「ありえないけど実現しそうな提案」で返すのがヤスオンの提案スタイルで、「こんなことやりたい」という出発点がどれだけ漠然としていても、具体的な演出案に落とし込んで提案する。テレビ・ラジオ出演を含む過去の映像は動画ギャラリーで公開されている。
社是「Smile with MUSIC」、ビジョン「一億総演奏の楽しさ知ってるよ化」、そして2050年の宇宙空間への演奏家派遣——経営理念「演奏を通してすべての生命の心を豊かに明るく」の「すべての生命」という言葉は、地球上に限定されていないのかもしれない。

